コンプライアンスを楽しみたい!

本エントリは法務系Advent Calendar2016の13日目のエントリーです。 前日は、経文緯武さんのグループガバナンスについてでした。

今回、お題について「在宅勤務したい!」と「コンプライアンスを楽しみたい!」で迷っていたのですが、前者は先週末に少し議論になっていたので後者の話を書いてみようと思います。

なお、本記事は私の現時点での個人的見解です。これから実践していく中で意見が変わる可能性もなきにしもあらずです。

自己紹介

新卒で法務に配属されて以来、2度の産休育休をはさみ契約法務っぽい仕事をやらせてもらってきましたが、今年、弊社グループ全体に適用されるコンプライアンスプログラムを推進するチームに異動してきました。

弊社もコンプライアンスプログラムを制定し、定期的に見直して、とちゃんとやってはいるのですが、優等生企業の不祥事が〜と言われる昨今、各職場、各従業員の心に響く施策を打たないといけないね、なんて話をしています。

でも、これってけっこう難しい。

なぜコンプライアンスを楽しみたい?

まずは、性悪説でいろんな施策を立てるのはコンプライアンス担当者(私)が辛いから。

次に、あれダメこれダメだけでは、ビジネス部門の方に聞き流されてしまうリスクが上がるから。まぁ、これは受け売りですが。

BLJの連載をきっかけに、増田英次先生の著書「もうやめよう!その法令遵守」を読んだのですが、「今のコンプライアンスは推進している人もやらされてる人もみんなコンプライアンスが嫌いなのが問題なのだ。嫌々やっている人間の言葉なんか誰も聞きたくない。」というご意見がすごく刺さったのでこのエントリを書いています。

どうやって楽しむ?

まずは、ワクワクするメッセージを発信すること。少なくとも自分がわくわくできることは最低ラインにしたいです。もちろん独りよがりではダメだから、会社のDNA的なものも意識して。

どちらかというと理屈が得意の法務パーソンは、理詰めでコンプライアンスの大切さを説くことが多いのではないかと想像するのですが、人間、理屈がわかっただけではなかなか行動が変わらなくて感情に訴えかける必要があるそうです。これは、前述の本だけではなく、去年夫の勧めで読んだ本「スイッチ!-「変われない」を変える方法」にも書いてありました。(良い本だったので半ば無理矢理ご紹介)

感情に訴える方法としては、何らかの事故を起こした人に、なぜそのような事態が起こったのか、行為時から発覚時までの心情を語ってもらうといい素材になりそうな気がします。 でも、(特に結果が軽微な場合)「あぁ、それはやっちゃうよね〜。」という方向に引っ張られる可能性もあるし、共有してる方もされる方もなんだか暗い気持ちになってしまいます。そもそも、ぶっちゃけて話してもらうのがまず難しそうでもあります。 なので、やっぱり前向きに感情を揺さぶりたい。自分ならどうするかをない知恵しぼって考えましたが難しい。うーん、企業理念や中期目標に絡めて、お客様に喜んでもらうことや社会の役に立つことの大切さを説く中に、遵守させたい法令の目的(not具体的な遵守条項)を盛り込むというのはどうでしょうか。大きい会社だと、全社メッセージはある程度抽象的にならざるを得ず、結果心を揺さぶる難易度がかなり高く感じられるので、部署ごとにブレークダウンしたメッセージも必要と考えています。グループ会社も各社の業態や所在地域(国)によって重点施策が異なるはずで、どれだけきめ細やかに個別対応が出来るかという点は鍵になりそうです。(これらのために各社・各部トップ層の協力は必須と思います。)

次に、ある程度自分たちで考えてもらう仕組みにすること。

日々の業務に忙しい皆さんに、一々自分たちで考えてもらうのが本当に良いことなのか、機械的に判断できるような基準を設けて余計なストレスを減らした方がいいのではないか、という悩みもあるのですが、一律に「できません」と決めつけられることほどつまらないものはないだろうとも思うのです。 予め一律に決めるとなるとなるべく安全サイドに寄せた規律にせざるをえず、現場を知らない奴らがビジネスの邪魔をする、と嫌われるだけですめばよい方で、一々守っていられない、と無視される危険もあるかと思います。

かといってあまり抽象的な規定にすると、結局どうすりゃいいのよ?と問い詰められますよね。理想を言えばぜひ問い合わせてもらって個別に一緒に対応を検討していくうちに各現場に考え方のノウハウが溜まるといいなぁ、と思ったりします。

最後に、やはり日々のコミュニケーションを丁寧に行うことでしょうか。 ビジネス部門の方とお話しする機会自体めっきり減ってしまいましたが、社内の方に助かったとか相談して良かったと言っていただく喜びは忘れがたいので、今の職務でもお得意様を作るチャンスは逃さないようにしたいです。

最後に

増田先生は、そもそもコンプライアンス法令遵守という言葉を封印してしまえ、とおっしゃっていますが、そこまでビジネスの中にとけ込ませてしまうと対外的な説明が面倒になる側面もありそうなので、結局バランスだろう、と感じています。法令の中にも解釈に幅のあるものから、これやったら一発アウトっていうものまであり、やっぱり危ないものは危ないと警告する必要はあると思いますし。でも、そもそもその警告を受け取ってもらえなかったり聞き流されてしまったりしないように、少しでもコンプアライアンスを前向きなものに出来ないか、と考えているところです。 ということで、これから自分のアイディアを形にするまでに上司にボコボコにされる予定なので、皆様からはお手柔らかなフィードバックをいただけると喜びます。

ふにゃふにゃな記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。 明日は、Hirohito Nakadaさんの「応用美術の著作権法上の保護の行方(仮)」です!